タスペーサーとは?縁切りとの違いと不要なケース・費用

スレート屋根の塗り替えの見積書に「タスペーサー」と書かれていて、何のための部材なのか気になった方も多いのではないでしょうか。タスペーサーは、塗装で屋根材の重なり部分の隙間がふさがらないようにするための部材です。隙間がふさがると、雨漏りや屋根の下地の腐朽につながることがあります。

この記事では、タスペーサーの役割、従来の「縁切り」との違い、メリット・デメリット、使わなくてよいケース、費用と見積書の確認ポイントを、製造元である株式会社セイムの公開情報をもとに、熊本で屋根塗装を行う株式会社佐藤塗装が解説します。

タスペーサーとは?役割と種類

タスペーサーは、株式会社セイムが開発・販売している、平板スレート屋根の再塗装(塗り替え)のときに「縁切り」を行うための部材です。屋根材の重なり部分に差し込んで、適切な隙間と通気性を確保します。セイムによると、全国約70万棟で採用されています(2020年7月現在、1棟で700〜800個使用で試算)(セイム「タスペーサー」製品紹介)。

平板スレート屋根は、「スレート」という板状の屋根材を重ねてつくる屋根です。屋根材1枚の厚さは5mm程度と薄く、軽いのが特長で、日本の住宅で数多く採用されています(セイム)。コロニアルやカラーベストといった商品名で呼ばれることもあります。

なぜ縁切りが必要なのか

新築時の平板スレート屋根には、屋根材の上下の重なり部分に4mmほどの隙間があり、雨水の排出と、屋根材の裏面の通気を確保しています。ところが、塗り替えで塗料を塗ると、この隙間が塗膜でふさがることがあります(セイム「縁切り」とは)。

隙間がふさがると、屋根材の縦の継ぎ目から入った雨水が排水できず、屋根材の裏に水分がたまります。毛細管現象と呼ばれる現象によって、屋根の下にある木材(屋根下地材)の腐朽や雨漏りの原因になります(同ページ)。塗装で失われた隙間を確保し直す作業が「縁切り」で、タスペーサーは、その縁切りを塗装の前に行うための部材です。

屋根の勾配(傾き)がゆるい屋根は、急な屋根に比べて雨水が流れにくく、重なり部分に水が残りやすくなります。雨水の逃げ道となる隙間を確保することは、屋根材の裏や下地の木材を湿気から守り、雨漏りを防ぐうえで欠かせません。

タスペーサー01と02の違い

タスペーサーには2つの種類があり、差し込むタイミングが異なります(セイム同「タスペーサー工法」とは)。

種類特徴差し込むタイミング
タスペーサー01通気性能やクッション性能、耐溶剤性などを向上させた新しいタイプ塗装工程の前
タスペーサー02通常の屋根補修に使われる汎用性の高いタイプ下塗りのあと(推奨)

どちらを使うかは、屋根の状態や施工店の工程によって変わります。

タスペーサーと従来の縁切りの違い

従来の縁切りは、塗装が終わって塗料が乾いてから、カッターや皮スキで重なり部分の塗膜を切り離す方法です。タスペーサー工法では、塗装の前に部材を差し込んでおくことで、塗装後も隙間が保たれます。主な違いは次のとおりです。

項目従来の縁切りタスペーサー工法
行うタイミング塗装が終わり、塗料が乾いてから塗装の前(02は下塗りのあと)
作業時間の目安一般的な平板スレート屋根で2人がかり1日一般的な屋根で約2〜3時間
塗装後に屋根に上がるか上がる必要がある上がる必要がない
仕上がりへの影響足跡が残ったり、屋根材の端(小口)が破損したりする原因になることがある足跡やキズ・破損のリスクが大幅に低減
縁切りをしたかの確認作業中や完了時の写真で確認する部材を差し込んだまま完了するため、一目で分かる

出典:セイム「縁切り」とは「タスペーサー工法」とは

セイムは、従来の縁切りについて、塗装完了の翌日の作業では屋根材の裏に入り込んだ塗料が完全に乾いていない場合が多く、せっかく作業しても、後日、再び重なり部分が密着してしまうことがあるとも説明しています(同「縁切り」とは)。

タスペーサーのメリット

  • 屋根材の重なり部分に差し込むだけで、適切な隙間と通気性を確保できる
  • 作業時間が短く、工期の短縮につながる
  • 塗装後に屋根に上がる必要がなく、足跡やキズ・破損のリスクが低い
  • 縁切りをしたかどうかが一目で分かる
  • 外部検証機関の実証実験で、毛細管現象による雨水の吸い上げを起こりにくくし、強風などでも飛散しないことが確認されている(セイム「タスペーサー工法」とは)

デメリット・注意点

  • 部材の費用と、差し込む手間がかかる
  • 劣化が進んで割れやすくなった屋根材は、差し込むときに割れないよう注意が必要
  • 差し込む場所や数が足りないと、隙間を確保できない部分が残る
  • 屋根材の間にすでに十分な隙間がある屋根では、使う必要がない(次の章)

屋根材のひび・割れ・欠けは、塗装の前の下地処理で補修します(セイム「屋根塗装工事(塗り替え)の流れ」)。タスペーサーを使うかどうかだけでなく、下地処理まで含めて工程を確認することが大切です。

タスペーサーが不要なケース

セイムは、縁切りはすべての屋根塗装で必ず必要というわけではなく、屋根材と屋根材の間に4mm以上の隙間がある場合は、縁切りやタスペーサーは不要としています。詳しくは施工店に確認するよう案内しています(セイム「タスペーサー工法」とは)。次のような場合は、タスペーサーを使わないことがあります。

  • 屋根材の間に、4mm以上の隙間がある
  • 粘土瓦や金属屋根など、平板スレート以外の屋根(折板屋根の塗装は折板屋根の塗装はなぜ必要?
  • 塗装ではなく、カバー工法や葺き替えで屋根を新しくする(屋根カバー工法とは?
  • 反りや割れが多く、塗装に向かない状態の屋根

隙間が大きい場合も、安心とは限りません。セイムは、防水性がなくなった屋根材が水分を含んだり乾燥したりを繰り返すと反りや浮きが起こり、重なり部分の隙間が大きくなると、暴風雨の吹き返しで雨水が浸入しやすくなると説明しています(セイム「経年劣化と主なトラブル」)。隙間の大きさだけで判断せず、屋根材の状態を点検したうえで工事の内容を決めます。

タスペーサーの費用と見積書

タスペーサーを使った縁切りの費用は、屋根の面積や形、使う部材の数によって変わります。当社の料金ページには縁切りやタスペーサー単体の料金は掲載していないため、屋根塗装のお見積りの中でご説明します(要相談)。屋根塗装の料金の目安は次のとおりです。足場代は別途です。

屋根塗装30坪40坪
シリコン17万円〜22万円〜
フッ素21万円〜28万円〜
無機・フッ素27万円〜34万円〜

セイムは、見積書に「縁切り」も「タスペーサー」も書かれていない場合は、縁切りを行うのか、どのように行うのかを、「縁切り」だけが書かれている場合はどのように行うのかを、施工店に確認するようすすめています。あらかじめ確認しておくことが、工事完了後のトラブル防止にもなるとしています(セイム「見積書の中の「縁切り」「タスペーサー」」)。見積書では、次の点を確認しましょう。

縁切りやタスペーサーの記載のしかたは施工店によって異なり、「一式」とまとめて書かれることもあれば、屋根の面積(平米)に応じた単価で書かれることもあります。価格だけで比べず、どの方法で、屋根のどの範囲に行うのかをあわせて確認することが大切です。

  • 「縁切り」や「タスペーサー」の項目があるか
  • 縁切りの方法(タスペーサーを使うのか、塗装後に切るのか)
  • 下地処理(高圧洗浄、ひび割れの補修など)の内容
  • 使う塗料の製品名と、塗る回数
  • 完了後に、写真で仕上がりを確認できるか

熊本での屋根塗装の料金や塗り替えの時期は熊本の屋根塗装|料金の目安と塗り替え時期で、外壁とあわせた費用の内訳は熊本の外壁塗装の費用相場で解説しています。

タスペーサー工法の施工の流れ

一般的な平板スレート屋根の塗装工事は、下地処理・塗装・点検の工程で進みます。タスペーサー工法では、差し込む作業を下地処理と同じ日に行え、塗料の乾燥を待つ必要がないため、工期の短縮につながるとされています(セイム「屋根塗装工事(塗り替え)の流れ」)。

  1. 下地の処理:高圧洗浄で屋根の上のコケ・カビ・藻類・古い塗膜を洗い落とし、ひび・割れ・欠けの補修や板金部の調整を行う
  2. タスペーサーの挿入:01の場合は下塗りの前に差し込む
  3. 下塗り:シーラーやプライマーなどを塗る(02の場合は下塗りのあとに差し込む)
  4. 中塗り:塗料をむらなく均一に塗る
  5. 上塗り:中塗りと同じ手順で塗料を重ねる
  6. 点検・仕上がりの修正:隙間が確保できているか、割れやひびがないかを確認する

屋根の苔や汚れの落とし方は屋根の苔(コケ)はなぜ生える?で、塗装の工程全体は外壁塗装の工程と流れで解説しています。

タスペーサーは、差し込むだけで効果が得られる部材ですが、屋根材の状態を見ながら、割れやすい部分を避けて正しい位置に差し込むには経験が必要です。屋根に上がって作業する職人が、下地処理から塗装、点検まで一連の工程の中で行います。

屋根の上での作業は、施工店に任せる

タスペーサーは通販などで購入できることもありますが、ご自身で屋根に上がって差し込むのは避けましょう。スレート屋根材メーカーのケイミューは、お施主様ご自身で屋根に登ったり飛び降りたりしないよう求めています。落下事故やけがの原因となるほか、屋根材が割れて雨漏りの原因にもなるためです。屋根の点検や再塗装、補修工事なども、お施主様ご自身では絶対に行わないよう注意しています(ケイミュー「屋根材 維持管理のお願い」)。

仕上がりは写真で確認する

塗装が終わったあとは、屋根に上がって確かめることはできません。縁切りやタスペーサーの状態は、施工中や完了時の写真で確認しましょう。当社では、着工前から完了までの写真と、使用した塗材をまとめた報告書をお渡ししています。縁切りの方法についても、お見積りの際にお気軽にご質問ください。

塗装を終えたスレート屋根(熊本市東区昭和町)カーボングレーの仕上がり
スレート屋根の塗装例:熊本市東区昭和町の住宅の屋根(遮熱塗料・カーボングレー)

写真の屋根は、高圧洗浄で汚れやコケ、劣化した旧塗膜を洗い流し、下塗りのあと遮熱塗料で仕上げました(熊本市東区昭和町の屋根塗装の施工事例)。ほかの事例は施工事例でご覧いただけます。

タスペーサーのよくある質問

Q. タスペーサーを入れずに塗装すると、どうなりますか?

縁切りをしないまま重なり部分がふさがると、雨水が抜けずに屋根材の裏にたまり、屋根下地材の腐朽や雨漏りの原因になることがあります(セイム「縁切り」とは)。ただし、隙間が4mm以上ある場合など、縁切りが不要な屋根もあります。見積書に縁切りの記載がない場合は、その理由を確認しましょう。

Q. スレート屋根は、何年くらいで塗り替えを考えればいいですか?

ケイミューは、スレート屋根材(コロニアルクァッド)について、築10年目のメンテナンス後は10年ごとの定期メンテナンスを行うこととし、そこでは再塗装や取替えなども想定しています(ケイミュー)。セイムも、屋根材が色あせたり、反りや浮きが目立ってきたりしたら、施工店に相談するようすすめています(セイム)。

Q. スレートにひび割れがある場合は、どうしますか?

塗装の前の下地処理で補修します。ケイミューは、屋根材の部分的な割れ・クラックは、屋根材の差替えや接着などで補修できるとしています(ケイミュー)。セイムも、平板スレート屋根材専用の浸透型補修剤を販売しています。割れが多い場合は、塗装ではなく、カバー工法や葺き替えを検討することもあります。

Q. 屋根の色を変える塗り替えでも、タスペーサーは必要ですか?

はい。色を変えるかどうかにかかわらず、塗装で重なり部分の隙間がふさがるおそれがある場合は縁切りが必要です。屋根の色選びは屋根の色で人気なのは?コーヒーブラウンの屋根で紹介しています。屋根リフォームの方法として塗装が合うかどうかも、現地調査で確認します。

Q. 苔が生えている屋根でも、タスペーサーは使えますか?

はい。塗装の前の高圧洗浄で苔や古い塗膜を洗い落としてから差し込みます。苔が生える原因や、放置するリスクは屋根の苔(コケ)はなぜ生える?で解説しています。

まとめ|縁切りの方法を確認

  • タスペーサーは、スレート屋根の塗り替えで重なり部分の隙間を確保する「縁切り」の部材
  • 隙間がふさがると、毛細管現象で屋根下地材の腐朽や雨漏りの原因になる
  • 従来の縁切りと比べて作業時間が短く、塗装後に屋根に上がる必要がない
  • 隙間が4mm以上ある場合など、縁切りやタスペーサーが不要な屋根もある
  • 見積書に「縁切り」「タスペーサー」の記載があるか、どの方法で行うかを確認する

株式会社佐藤塗装は、熊本市北区に本社を置き、2023年3月には熊本市南区城南町にも営業所を開設した塗装会社です。足場の設置まで自社で対応し、劣化診断士が屋根の状態を写真でご説明します。雨漏りが心配な場合は、在籍する雨漏り鑑定士が原因を調べます(熊本の雨漏り修理)。スレート屋根の塗り替えをお考えの方は、お気軽にご相談ください。無料の現地調査・お見積りのご相談はこちら