通気緩衝工法は、屋上のウレタン防水で、下地と防水層の間に通気緩衝シートを挟み、下地の水分を逃がす工法です。膨れを防ぐ仕組みと密着工法との違い、工程を、熊本の塗装会社が解説します。
この記事は、熊本で外壁・屋根の塗装と防水工事を行う株式会社佐藤塗装(雨漏り鑑定士在籍)がまとめています。アパートやビルの屋上、陸屋根の防水の改修を検討している方の参考にしてください。
屋上防水の通気緩衝工法(絶縁工法)とは?
ウレタン防水は、液体のウレタン樹脂を塗り重ねて、継ぎ目のない防水層をつくる塗膜防水の一種です。通気緩衝工法は、このウレタン防水の工法のひとつで、下地の上に「通気緩衝シート」を張り、その上からウレタン防水材を塗って防水層をつくります。
防水層を下地に直接くっつけず、シートを挟んで下地と縁を切ることから「絶縁工法」とも呼ばれます。シートの裏側には空気の通り道があり、屋上に設置する「脱気筒(だっきとう)」から、下地の水分が水蒸気として外へ逃げる仕組みになっています。国の「公共建築工事標準仕様書」では、ウレタンゴム系塗膜防水の種別として、通気緩衝シートを用いる絶縁工法を「X-1」、密着工法を「X-2」としています(国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版」)。
なぜ通気緩衝シートが必要なのか
コンクリートやモルタルの下地には、目に見えなくても水分が含まれています。とくに、長く雨漏りしていた屋上や、古い防水層の下に雨水が入り込んでいた屋上では、下地に多くの水分が残っていることがあります。
防水層を下地に直接密着させると、夏の日差しで下地が温められたとき、下地の水分が水蒸気になって膨らみ、逃げ場がないため防水層を押し上げてしまいます。これが防水層の「膨れ」です。膨れた部分は破れやすく、そこから雨水が入る原因になります。通気緩衝工法は、この水蒸気を逃がすことで膨れを防ぎます。
防水層が膨れる主な原因
- 下地のコンクリートやモルタルに残っていた水分が、日射で温められて水蒸気になる
- 既存の防水層の下や、ひび割れから入り込んだ雨水が抜けずに残っている
- 下地の乾燥が不十分なまま、防水材を塗り重ねた
膨れを見つけたときは、無理につぶしたり切ったりせず、点検を依頼してください。膨れの下に水がたまっている場合は、下地の乾燥や部分的な補修が必要になります。
通気緩衝シートと脱気装置の役割
通気緩衝工法の要になるのが、下地と防水層の間に張る「通気緩衝シート」と、屋上に取り付ける「脱気装置(脱気筒)」です。国の「公共建築工事標準仕様書」でも、ウレタンゴム系塗膜防水の絶縁工法(X-1)では、通気緩衝シートを張り、脱気装置を設けることとされています(国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」)。
| 部材 | 役割 |
|---|---|
| 通気緩衝シート | 下地と防水層を密着させず、すき間をつくる。下地の水分が蒸発してできた水蒸気の通り道になり、建物の動きも吸収する |
| 脱気装置(脱気筒) | シートの下にたまった水蒸気を外へ逃がす出口。防水層が膨れるのを防ぐ |
下地に水分が残りやすい古い屋上や、雨漏りしている屋上ほど、水蒸気を逃がすしくみが大切になります。密着工法で下地の水分を閉じ込めると、夏の日差しで水蒸気がふくらみ、防水層の膨れや剥がれの原因になります。
密着工法との違い
| 比べる点 | 通気緩衝工法(X-1) | 密着工法(X-2) |
|---|---|---|
| つくり方 | 通気緩衝シートを張り、その上にウレタン防水材を塗る | 下地にウレタン防水材を直接塗る(補強布を入れることもある) |
| 下地の水分 | 脱気筒から水蒸気を逃がせるため、膨れが起きにくい | 水分が多い下地では膨れが起きやすい |
| 下地のひび割れ | シートが下地の動きを受け止め、防水層に伝わりにくい | 下地のひび割れが防水層に伝わりやすい |
| 向いている場所 | 面積の広い屋上、陸屋根、既存防水の改修 | ベランダなどの狭い場所、形が複雑な場所 |
| 費用・工期 | シートと脱気筒の分、大きくなりやすい | 比較的抑えやすい |
ほかに、ウレタン防水材の中にメッシュ(補強布)を入れて強度を高める「メッシュ工法」などもあります。どの工法が合うかは、下地の状態や広さ、既存の防水の種類で判断します。
FRP防水・シート防水との違い
| 防水の種類 | 特徴 | 向いている場所 |
|---|---|---|
| ウレタン防水(通気緩衝) | 液体の材料を塗って継ぎ目のない防水層をつくる。シートで下地の水分を逃がせる | 広い屋上・陸屋根、湿った下地の改修 |
| FRP防水 | ガラス繊維と樹脂で硬く軽い防水層をつくる。硬いぶん、建物の動きが大きい場所では割れが出ることがある | ベランダ・バルコニーなど比較的狭い場所 |
| シート防水 | 塩ビやゴムのシートを張る。広い面を均一に仕上げやすい | 凹凸の少ない広い屋上 |
どの防水が合うかは、既存の防水の種類や下地の状態、広さで変わります。防水工事の種類の全体像は防水工事の種類で紹介しています。
メリット・デメリットと向いている場所
通気緩衝工法には、下地の水分を逃がせるという大きな利点がある一方、費用や工期の面で注意点もあります。向いている場所とあわせて確認しましょう。
メリット
- 下地の水分を逃がし、防水層の膨れを防ぎやすい
- 下地のひび割れや動きの影響を受けにくい
- 既存の防水層の種類を問わず、改修に使いやすい
- ウレタン防水なので継ぎ目がなく、設備の基礎まわりなど複雑な形にも対応しやすい
- 長く雨漏りしていた屋上など、下地が湿った状態の改修にも向いている
デメリット・注意点
- 密着工法より材料と工程が多く、費用と工期が大きくなりやすい
- 脱気筒を設置するため、屋上に筒状の部材が立つ
- 立ち上がり(壁との取り合い)の部分は、シートを張らずに密着で仕上げることが多い
- ウレタン防水は職人の手で塗るため、塗る厚み(膜厚)を確保する施工の丁寧さが仕上がりを左右する
- 狭いベランダなどでは、通気緩衝工法よりほかの工法が合う場合がある
ウレタン防水の性能は、決められた膜厚を確保できるかどうかで大きく変わります。見積書に、塗る回数や、使う材料の名前が書かれているかを確認しましょう。
向いている場所
- アパートやビル、住宅の平らな屋根(陸屋根)や屋上
- 面積が広く、下地が湿りやすい屋上
- 長く雨漏りしていた、または古い防水層の下に雨水が回っていた屋上
- シート防水やアスファルト防水など、既存の防水からの改修
屋上の防水層が傷むと、真下の部屋の天井に雨漏りすることがあります。雨漏りの原因の見分け方は雨漏りの原因はどこ?、防水工事の種類の全体像は防水工事の種類と業者の選び方で紹介しています。
通気緩衝工法の施工の流れと事例
熊本市北区のアパートの屋上で、当社が通気緩衝シートとウレタン防水で防水層を作り直したときの工程を例に紹介します(施工事例)。
- 既存防水の撤去・下地の確認:既存のシート防水を撤去し、立ち上がりや端部も含めて、下地の含水・クラック(ひび割れ)・浮きを確認
- 下地処理:ケレンや清掃を行い、クラックの補修や、凹凸をならす不陸調整を実施。含水が多い場合は乾燥の期間を確保
- プライマーの塗布:下地に合ったプライマーを全面に塗り、決められた乾燥時間を確保
- 通気緩衝シートの張り付け:シートのつなぎ目は決められた幅で重ね、端部や立ち上がりも処理。必要な箇所に脱気筒を設置
- ウレタン防水(2層):ウレタン防水材を2回塗り、決められた膜厚を確保
- トップコート:紫外線や摩耗から防水層を守るトップコートを塗布
- 完了検査:端部・ドレン(排水口)まわり・排水の状態を確認
防水工事は、表面をきれいに仕上げても、下地が傷んでいると長持ちしません。既存の防水を撤去して下地の状態を確かめ、補修を優先して行うことが、耐久性を左右します。

当社の施工事例
アパートの屋上防水工事では、既存の防水を撤去して下地の状態(含水・クラック・浮き)を確認し、クラックの補修や不陸の調整などの下地処理を優先して丁寧に行ったうえで、通気緩衝工法のウレタン防水で仕上げました。防水工事は、表面だけをきれいにしても下地が傷んでいると長持ちしないため、下地の確認から始めることを大切にしています。
当社では、着工前から完了までの作業状況の写真と、使用した材料をまとめた報告書をお渡ししています。防水層は完成すると下地やシートが見えなくなるため、工程の写真が、将来のメンテナンスや保証の確認に役立ちます。保証の確認のポイントは外壁塗装の保証とは?で紹介しています。
熊本の気候と防水層の膨れ
熊本は梅雨の時期に雨が多く、夏は屋上の表面温度が高くなります。雨で下地に入った水分が、夏の日差しで水蒸気になってふくらむため、防水層の膨れが起こりやすい環境です。雨漏りしている屋上や、長く改修していない屋上では、通気緩衝工法を検討しましょう(熊本の梅雨入り)。
防水層のメンテナンスと業者選び
- トップコートを定期的に塗り替え、防水層そのものを紫外線から守る
- ドレン(排水口)にたまった落ち葉や砂を取り除き、水たまりをつくらない
- 防水層の膨れ、ひび割れ、剥がれがないかを定期的に確認する
- 屋上に物を置きっぱなしにしない、重い物を引きずらない
トップコートの劣化や小さな傷は、早めに補修すれば防水層全体のやり直しを防げます。雨漏りを防ぐための点検のポイントは雨漏り対策|屋根・外壁の予防法と点検でも紹介しています。
業者選びと雨漏り修理
- 既存の防水の種類と下地の含水を確かめたうえで、工法を選んだ理由を説明してくれるか
- 通気緩衝シートの製品名、脱気装置の数と位置が見積書に書かれているか
- 雨漏りしている場合は、防水だけでなく雨水の入り口(笠木・排水口・外壁のひび割れなど)も調べてくれるか
- 工事後の保証とトップコートの塗り替えの時期を説明してくれるか
防水工事の種類と業者の選び方は防水工事の種類と選び方、屋上防水の費用は屋上防水の費用、熊本の雨漏り修理は熊本の雨漏り修理で紹介しています。
通気緩衝工法のよくある質問
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
屋上の面積、既存の防水の種類、下地の補修の量によって大きく変わるため、当社では現地調査のうえで個別にお見積りしています(要相談)。雨漏りの修理を含む場合の費用の考え方は雨漏り修理の費用はどう決まる?で解説しています。
Q. 脱気筒とは何ですか?
通気緩衝シートの下にたまった水蒸気を、外へ逃がすために屋上に取り付ける筒状の部材です。屋上の広さに応じて、必要な箇所に設置します。
Q. 工事中は雨が降っても大丈夫ですか?
ウレタン防水材やプライマーは、雨に濡れると性能が落ちるため、雨の日は作業を行いません。下地が濡れている場合も乾燥を待つため、天候によって工期が延びることがあります。
Q. 雨漏りしている屋上でも施工できますか?
できる場合が多いですが、まず雨漏りの原因を調べ、既存の防水層の状態と、下地にたまった水分を確認します。下地が湿っている屋上は、水蒸気を逃がせる通気緩衝工法が向いていることが多い一方、下地の傷みがひどい場合は、補修や乾燥の期間が必要になります。
Q. 塗装工事と一緒にできますか?
はい。外壁や屋根の塗装とあわせて行えば、足場や工程をまとめられます。熊本市北区山室のアパートでは、外壁・屋根の塗装とあわせて屋上防水を行いました(施工事例)。
あわせて読みたい:屋上防水の費用はどう決まる/ベランダ床塗装はDIYでできる
まとめ|屋上の改修は通気緩衝工法も検討
- 通気緩衝工法は、シートを挟んで下地の水分を逃がすウレタン防水の工法
- 防水層の膨れを防ぎやすく、下地のひび割れの影響を受けにくい
- 面積の広い屋上や、既存防水の改修、湿った下地に向いている
- 密着工法より費用と工期は大きくなりやすい
- 下地処理と膜厚の確保が、耐久性を左右する
熊本で屋上や陸屋根の防水工事を検討している方は、株式会社佐藤塗装にご相談ください。これまでの工事は施工事例でご覧いただけます。

